特養や老健などの公的介護保険指定施設に入居できない場合、どのような施設があってどの施設を選べば良いのか判らないという相談が沢山寄せられます。
身体状況や金銭面で入居できる施設や住宅、家族が通うアクセスに適しているかなど立地条件も重要なポイントになってきます。
そこで、高齢者施設の種類や「サ高住」と「有料老人ホーム」の違い等に触れながら、施設を選ぶ時のチェックポイントを具体的に詳しく解説していきます。
高齢者向け施設の種類
高齢者施設は、主に公的機関が運営している施設タイプと、主に民間機関が運営している住宅タイプに分かれています。
施設タイプ(主に公的機関が運営)
- 特別養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム(ケアハウス・A型・B型)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
住宅タイプ(主に民間機関が運営)
- 有料老人ホーム(介護付・住宅型・健康型)
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- 認知症高齢者グループホーム
では、「特養?老健?自宅以外で介護を受けられる介護施設とは?」で解説している特養と老健、介護医療院以外の高齢者施設について見て行きましょう。
軽費老人ホーム(ケアハウス・A型・B型)
低額な料金で、家庭環境や住宅事情等の理由により居宅において生活することが困難な高齢者を入所させ、日常生活上必要な便宜を供与する施設です。
生活相談、入浴・食事サービスの提供を行うとともに、車椅子での生活にも配慮した構造を有する「ケアハウス」を主として、他に食事の提供や日常生活上必要な便宜を供与する「A型」、自炊が原則の「B型」があります。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐しホームの職員が介護保険のサービスを提供する「介護付有料老人ホーム」、ホームは介護サービスを提供せず入居者自らが外部のサービス事業者と契約して介護サービスを利用する「住宅型有料老人ホーム」、家事手伝いなどのサポートを受けられ日常生活を楽しむための設備が充実している「健康型有料老人ホーム」の3タイプがあります。
2022年8月1日現在、札幌市に「健康型有料老人ホーム」はなく、「介護付有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」合わせて400施設の有料老人ホームがあります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
高齢者の受け入れを支援することに特化した集合住宅で、専用部分床面積が25㎡以上のバリアフリー構造であることが原則となっています。
「安否確認」と「生活相談」サービスが必須で、介護保険サービスは訪問介護などの外部サービスを利用する場合が多くなっています。
認知症高齢者グループホーム
認知症の高齢者が、小規模な生活の場(1単位5~9人の共同居住形態)に居住し、食事の支度、掃除、洗濯等をグループホームの職員と共同で行い、家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活を送ることを目的とした施設です。
要支援2以上で、医師から認知症と診断されていること、ホームと同一の市区町村に住民票があることが入所要件となります。
地域密着型サービス(原則として利用者は当該市町村の住民)に位置づけられ、比較的小規模な事業所や経営組織が多いのが特徴です。
サ高住と有料老人ホームの違い
サ高住と有料老人ホームは契約方式が異なる
「サ高住」と「有料老人ホーム」の大きな違いは、契約方式が異なることです。
「有料老人ホーム」は原則として利用権契約となり、「サ高住」は賃貸借契約となります。
つまり、「サ高住」と「有料老人ホーム」では、お金の支払い方が違ってきます。
ではどう違うのか、細かく見て行きましょう。
ホーム入居に必要なお金
ホームの種類 | 入居時 | 月々 | ||
---|---|---|---|---|
サ高住 | 敷金 | 家賃、食費等月々利用料 | ||
有料老人ホーム | 前払い(一時入居金等) | 家賃、食費等月々利用料 |
「有料老人ホーム」の前払い金は、入居金や一時入居金など運営事業者によって表記が異なり、金額も事業者によってゼロから数千万円に上るなどかなり差があります。
また「サ高住」の中には、一時前払金が必要となる住宅もあります。
考え方として、「サ高住」は、食事の提供を受けることができる高齢者向け賃貸マンション(必要な場合は外部の介護保険サービスを利用)、「有料老人ホーム」は、施設を利用する権利を購入する入居一時金が必要となる老人ホームで、24時間介護士が常駐しホーム内で介護保険サービスの提供を受ける「介護付有料老人ホーム」と、外部の介護保険サービスを利用する「住宅型有料老人ホーム」に分かれていると整理しておくと良いでしょう。
※「サ高住」の中にも、24時間介護士が常駐し介護保険サービスを提供している「サ高住」があります。
「サ高住」は賃貸マンションと捉えれば、お金の支払イメージはおおよそ見当がつくと思いますが、「有料老人ホーム」の場合、前払金(入居一時金)があり事業者によって金額も異なることから、中々イメージがしにくいかと思います。
そこで、「有料老人ホーム」に支払うお金のしくみについて解説していきます。
有料老人ホームの入居費用
前払金
各ホームが想定居住期間を算出し、家賃の全部または一部の前払い(前払金)を入居時に預けます。
償却期間
前払金が償却され、ゼロになるまでの期間を償却期間といいます。
償却
ホーム側に預けておいた償却期間分の家賃を、月々分割しながら切り崩すことを償却といいます。
初期償却
償却期間を超えて住み続ける場合を見越し、前払金の20%~30%を初期償却として設定しているホームがあります。これは入居時に償却され、退去時に返還されません。
初期償却を設定しているホームの場合、前払金の総額から初期償却分を差し引いた残額を、償却期間を通じ分割してホーム側が受け取るしくみになっています。
均等償却
最近は初期償却を設定しないホームも増え、前払金からの初期償却は行わず、償却期間中月々均等な金額で償却していく均等償却を行うホームがあります。
未償却金
経過していない期間分の前払金のことを未償却金といいます。
前払金を納めたホームにおいて償却期間内に退去することとなった場合、償却していない残りの前払金について返金を受けることができます。
失敗しない施設選びの探し方10のチェックポイント
有料老人ホームや高齢者向け住宅を見学される際にチェックすべき項目を挙げてみました。
建物や設備、入居条件等は理解できても実際に入居してみないと判らないことも多々あります。
失敗しない施設選びの探し方ポイントをチェックしておきましょう。
立地条件
- バス停、地下鉄駅まで歩いて行くことができる距離にあるか
- 郵便局、銀行や医療機関などへの行き来に不便がないか
- デイサービスなどの通所サービスを引き続き利用する場合、送迎区域内か
入退去の条件
- 身元引受人、連帯保証人、火災保険加入の義務付け等の条件について確認したか
- 自立が前提なのか、要介護認定が前提なのかを確認したか
- 要介護のどの介護度合いまで住み続けられるかを確認したか
- 入居中に認知症になった場合の対応を確認したか
費用
- 一時金が設定されている場合、退去時の返却方法を確認したか
- 月々の費用は納得できるものであったか
- 冬期間の費用(暖房費等)を確認したか
- 水道光熱費等公共料金の費用支払いはどうなっているか
- 火災保険料、退去時の清掃費、町内会費支払いの有無はどうなっているか
居室
- 家具など所持品を設置しても必要な広さが確保できるか
- 押し入れやクローゼットなど収納は十分あるか
- 窓の方向、カーテンの有無(サイズ・防炎必須か)、ベランダの有無などをチェックしたか
- 段差や玄関ドアの形状を確認したか
- トイレ、浴室、洗面、キッチン、暖房設備(灯油・ガス・電気)を確認したか
- ナースコールの配置場所を確認したか
- 洗濯物を干す設備(ポール等)があるか
- 固定電話、TV端子(BS受信可否)等通信設備環境を確認したか
- 照明設備は備付か
共用設備
- 部屋にトイレや風呂が無い場合、浴場やトイレはどのようになっているか
- 娯楽を楽しめる環境があるか
- 洗濯機を置けない場合、コインランドリーなどの環境があるか、料金は?
- セキュリティ体制(夜間の施錠等)を確認したか
- 家族との面会はどのような対応を取っているか
食事
- 毎日3食か2食か都合による選択肢はあるのか
- 食事をキャンセルする場合、何日前までにキャンセルが必要か
- 月何食以上食べなければならないという制約があるのか
- きざみ食や病気対応食の提供が可能か
- 部屋までの配膳が可能か、可能な場合の料金は?
- その場で作られた食事が提供されるのか、外部からの持ち込み食か
支援サービス
- 24時間常駐のスタッフがいるか、常駐スタッフは何の資格を持ったスタッフか
- ナースコール(緊急通報システム)の連絡先はどこになっているか(内部?外部?夜間は?)
- 服薬管理、金銭管理サービスの提供があるか、利用料金は?
- 買物や通院付添同行等介護保険外サービスの提供システムがあるか、利用料金は?
- 救急搬送された場合、ホーム側でどういう対応をどこまでしてもらえるのか
- 安否確認の方法を確認したか
介護と医療
- 居宅介護支援事業所、デイサービス、小規模多機能型居宅介護等の付帯設備があるか
- 介護保険の利用内容やケアマネジャーの選択についての自由が保障されているか
- 提携先の医療機関はあるか
- 介護度が重度化した場合の対応はどうなっているか
コミュニケーションと地域との連携
- レクリエーションなどイベントや季節ごとの行事などが設定されているか
- 入居者間でいざこざが起こった場合、どういう対応を取っているか
- 家族が気軽に行き来できる雰囲気であったか
- 住まいとして町内会に加入しているか
- 地域の人々との交流はあるか
その他
- 経営理念や具体的なポリシーがしっかりと明確に定められているか
- スタッフの挨拶や表情、雰囲気についてどう感じられたか
- 入居者のプライバシーは守られているか
- いざ最期を迎える時、ここに住んで良かったと思える所であったか
まとめ
施設や住宅は、その運営する事業者によってさまざまなタイプがあり、同じ事業者でも施設によって個々に違いがあります。
検討をつけたら実際に見学に行き、10のポイントを参考に詳細を確認することをおすすめします。
個別に見学予約を行うことが難しければ、NPO法人札幌高齢者住まいのサポートセンター(電話:011-200-0747)に見学予約を依頼する方法もあり、無料相談や見学同行(送迎付)も対応していますので、ご活用されてみてはいかがでしょうか。
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